この記事の要点
- AI検索対策の中身は情報構造の設計と実装が7割。制作工程と不可分なため、設計に関与できる依頼先が有利です。
- SEO会社はキーワード設計と記事制作に強く、実装は制作会社任せになりがち。分業だと手戻りが発生します。
- 広告代理店は体制の厚さが強みだが、実作業は下請け。細部の精度は再委託先の力量に依存します。
- 分けて発注すると、責任の所在が曖昧になるのが最大のリスク。効果が出なかったとき、どちらの問題か判定できません。
- リニューアルを伴うなら制作会社、サイトを維持するならSEO会社か専業。判断軸は「構造を変える必要があるか」です。
結論:判断軸は「構造を変えるか」
AI検索対策の依頼先で迷ったとき、判断の軸はひとつです。サイトの構造を変える必要があるかどうか。
| 状況 | 推奨する依頼先 | 理由 |
|---|---|---|
| リニューアルを伴う | ホームページ制作会社 | 設計段階から構造を組める。後戻りがない |
| サイトは維持、記事とテキストで改善 | SEO会社/専業 | 制作工程が不要。コンテンツに集中できる |
| 複数チャネルを統合したい | 広告代理店 | 広告・SNSと横断で設計できる |
| 予算が限られ、範囲も限定的 | フリーランス/専業 | 固定費が低く、必要な部分だけ頼める |
この判断ができない場合は、まず現状診断だけを受けて構造上の問題を洗い出すところから始めてください。構造に問題がなければ制作は不要ですし、問題があるなら制作会社の領域です。
AI検索対策の作業を5工程に分解する
依頼先を比較する前に、そもそもどんな作業が必要かを整理します。AI検索対策は次の5工程で構成されます。
| 工程 | 内容 | 全体に占める重み |
|---|---|---|
| 1. 診断 | AIでの現状露出、競合の言及状況、技術的な問題の洗い出し | 10% |
| 2. 情報構造設計 | ページ分割、見出し設計、URL設計、内部リンク | 30% |
| 3. 技術実装 | 構造化データ、robots.txt、llms.txt、レンダリング、速度 | 25% |
| 4. コンテンツ制作 | 一次情報の抽出、記事の設計と執筆、FAQ整備 | 25% |
| 5. 計測・改善 | プロンプト単位の言及調査、GA4分析、改善提案 | 10% |
注目すべきは、2と3を合わせて全体の55%を占める点です。この2工程は制作工程と不可分であり、ここに関与できるかどうかが依頼先の実行力を分けます。工程ごとの費用感はAI検索対策の費用相場で詳しく解説しています。
比較の方法
各社の提案を受けたら、この5工程のうちどれを自社で実施し、どれを外部に委託し、どれを実施しないのかを確認してください。すべてを自社で完結できる会社は多くありません。委託する工程がある場合、その管理責任がどこにあるかも確認します。
情報構造設計と技術実装だけで全体の55%を占めます。この2工程は制作工程と不可分であり、ここに関与できるかどうかが依頼先の実行力を分けます。
なぜ依頼先によって結果が変わるのか
同じ「AI検索対策」を発注しても、依頼先によって結果に差が出ます。金額の違い以上に、この差は大きくなります。理由は3つあります。
理由1:関与できるタイミングが違う
AI検索対策の効果は、サイトマップを引く段階でおおよそ決まります。どのページに何を書くか、どう分割するか、URLをどう設計するか。この判断が終わったあとに呼ばれた会社にできるのは、タグの追加と記事の追加だけです。
制作会社が有利なのは、技術力が高いからではなく、この最初の判断に立ち会えるからです。逆に言えば、リニューアルの予定がなく構造も整っているサイトなら、この優位性は消えます。依頼先の優劣は、状況によって入れ替わります。
理由2:得意な工程が違う
前章で挙げた5工程のうち、SEO会社が最も得意なのは4のコンテンツ制作、制作会社は2の情報構造設計と3の技術実装、専業は1の診断と5の計測です。どの会社も、すべての工程で同じ水準を出せるわけではありません。
問題は、多くの会社が「一通り対応できます」と答えることです。実際には得意不得意があり、苦手な工程は形式的な対応になりがちです。だからこそ、5工程に分解して「どこが強いか」を聞くことに意味があります。
理由3:成果の定義が違う
SEO会社は順位と流入を、広告代理店は認知と獲得単価を、制作会社は納品と品質を、それぞれの成果と捉えてきました。この習慣は、AI検索対策の進め方にも表れます。
たとえば「AIに引用されること」をゴールに置く会社と、「問い合わせが増えること」をゴールに置く会社では、施策の優先順位が変わります。前者は構造化データと記事に投資し、後者は導線とフォームの改善にも予算を割きます。どちらが正しいということはなく、自社の目的とゴール設定が一致しているかが重要です。
商談で確認したいこと
「この施策が成功したとき、何がどう変わっていますか」と聞いてみてください。答えが「AIに出るようになります」で止まる会社と、「AIに出て、そこから問い合わせが月◯件増える見込みです」と答える会社では、施策の設計思想が違います。
どの会社も、すべての工程で同じ水準を出せるわけではありません。商談では「一通り対応できます」ではなく、5工程のうちどこが強いかを具体的に聞いてください。
この図のどこに自社が当てはまるか判断がつかない場合は、無料のAI検索診断で現状をお調べします。
無料でAI検索診断を依頼する →SEO会社に頼む場合
強み
- キーワード設計の蓄積:どんな言葉で検索されるかの分析に慣れている
- 記事制作の体制:ライターを抱え、継続的にコンテンツを出せる
- 計測の習慣:数値で報告し、改善提案を出す文化がある
- 検索エンジンの基礎:AI検索の土台となるSEOの理解がある
限界
- 実装は制作会社任せになりがち:構造化データの提案はできても、実装は別会社
- デザインは対象外:見た目を変える必要がある場合は対応できない
- 順位思考から抜けきれない場合がある:AI検索の評価軸への切り替えができているか要確認
向いているケース
サイトの構造に大きな問題がなく、記事とテキストの改善で成果を狙える状況です。すでに情報構造が整理されており、あとはコンテンツの厚みを増すだけ、という段階なら最も効率的です。
確認すべきこと
商談で必ず聞いてください。「構造化データの実装は御社で行いますか、それとも制作会社への指示になりますか」。指示だけの場合、実装の品質は制作会社の力量に依存します。あわせて、実装後の検証を誰が行うかも確認してください。
実務での見え方
SEO会社に依頼したとき、最初の3か月で提示されるのは、たいていキーワードの一覧と記事の企画案です。これ自体は正しい進め方ですが、その裏側で「そもそもこのサイト構造で記事を足して効果が出るのか」という検証が行われているかは別問題です。
1ページに複数のサービスが混在した構成のまま記事だけを増やしても、AIはトップページやサービスページを引用先として選びにくいままです。記事の企画に入る前に、既存ページの構造についての指摘があるかどうかを見てください。指摘がある会社は、コンテンツだけでなく構造まで見ています。
広告代理店に頼む場合
強み
- 体制の厚さ:担当者が交代しても継続性が保たれる
- 横断的な設計:広告、SNS、Web、オフラインを統合して考えられる
- 大規模案件の管理力:関係者が多い案件の進行に慣れている
- 予算管理の仕組み:稟議や請求のフローが整っている
限界
- 実作業は再委託:制作会社やフリーランスに流れ、細部の精度は再委託先次第
- 中間マージン:同じ成果物で2〜3割高くなる
- 専門性のばらつき:AI検索対策を理解している担当者に当たるかは運の要素がある
- 意思決定の速度:確認の階層が多く、小さな修正にも時間がかかる
向いているケース
複数チャネルを統合管理したい、社内に管理できる人員がいない、予算規模が大きい。この3つが揃う場合は、管理工数を外部に預ける対価として合理的です。
確認すべきこと
「実作業はどこが担当しますか」と率直に聞いてください。再委託先が明示され、その会社の実績も確認できるなら問題ありません。曖昧にされる場合は、品質の管理体制を確認する必要があります。
実務での見え方
代理店経由の案件では、発注側が話している相手と、実際に手を動かす人が別です。これ自体は普通のことですが、AI検索対策のように技術的な判断が多い領域では、伝言の過程で情報が落ちることがあります。
対策としては、キックオフの段階で実制作の担当者を同席させてもらうことです。技術的な質問を直接投げられる状態を作っておくと、進行中の認識のずれが大幅に減ります。この依頼を断られる場合は、体制に不安が残ります。
ホームページ制作会社に頼む場合
強み
- 設計段階から構造を組める:AI検索対策で最も重要な工程に最初から関与できる
- デザインと両立できる:ブランド表現を保ちながら、機械可読性を確保する設計ができる
- 実装まで一貫している:設計と実装の間で情報が落ちない
- 手戻りが少ない:後から構造を組み替える必要がない
限界
- 公開後の計測体制が弱い会社もある:納品して終わりの文化が残っている場合がある
- キーワード設計の経験に差がある:制作は得意でも、検索需要の分析は不慣れなことがある
- AI検索対策を看板に掲げているだけの会社もある:実務経験の確認が必要
向いているケース
リニューアルを伴う場合、構造に問題がある場合、デザインも刷新したい場合。AI検索対策の55%を占める「情報構造設計+技術実装」を一気に済ませられるのが最大の利点です。
確認すべきこと
「公開後のAI言及はどう計測して報告いただけますか」。ここで順位計測の話しか出てこない場合、制作は得意でも運用の体制がない可能性があります。判別方法はAI検索対策会社の選び方にまとめています。
実務での見え方
制作会社に依頼した場合、AI検索対策の作業は制作工程の中に溶け込む形になります。「AI検索対策」という独立した工程として見えないことも多く、発注側からは何が行われているか分かりにくいことがあります。
そのため、進行中に成果物として何が出てくるかを最初に確認してください。サイトマップ、見出し設計書、構造化データの実装リスト、リダイレクト表。これらが成果物として提出されるなら、対策は工程として組み込まれています。逆に、デザインカンプと納品されたサイトしか出てこない場合、対策が形式的である可能性があります。
AI検索対策の専業に頼む場合
強み
- 最新動向への追随が速い:この領域だけを追っている
- 計測ノウハウの蓄積:プロンプト設計や言及調査の方法論を持っている
- 技術的な深さ:構造化データやクローラー設定に精通していることが多い
限界
- 会社が新しく、実績が浅い:この領域自体が新しいため避けられない
- 制作は範囲外のことが多い:デザインや大規模な改修には対応できない
- 提供範囲が狭い:診断と技術実装のみ、というケースがある
向いているケース
すでに良質なサイトがあり、対策だけを足したい状況。または、既存の制作会社との関係を維持したまま、AI検索対策の部分だけを補完したい場合です。
確認すべきこと
実績が浅いのは前提として、その会社自身のサイトを確認してください。構造化データが実装されているか、llms.txtがあるか、AIに聞いたときに引用されるか。自社で実践していない会社が、顧客のサイトで成果を出すのは困難です。
実務での見え方
専業に依頼する場合、成果物は診断レポートと実装指示書、そして月次の計測レポートが中心になります。手を動かす範囲が限定される代わりに、判断の根拠が言語化されて出てくるのが特徴です。
この形式は、社内にWeb担当者がいる企業と相性が良くなります。指示書をもとに、社内または既存の制作会社が実装を進める。逆に、実装を担う体制が社内にも取引先にもない場合は、指示書だけ受け取っても前に進みません。依頼する前に、実装を誰が行うかを決めておいてください。
フリーランスに頼む場合
強み
- 費用が抑えられる:同じ作業で制作会社の半分程度
- 意思決定が速い:窓口と作業者が同じ人
- 柔軟性が高い:必要な部分だけを依頼できる
限界
- 継続性のリスク:体調不良、廃業、他案件の繁忙で対応が止まる
- 対応範囲が限定的:デザインと実装の両方をこなせる人は多くない
- 品質の見極めが難しい:組織の看板がないため、事前判断の材料が少ない
向いているケース
作業範囲が明確に限定できる場合です。「構造化データの実装だけ」「記事の執筆だけ」といった切り出し方なら、費用対効果は高くなります。全体設計を任せるのは、その人の実績を十分に確認できた場合に限るのが安全です。
フリーランスと契約するときの実務的な注意
費用面の利点は大きいので、範囲を限定して依頼するのは有効な選択です。ただし、組織と契約する場合とは異なる備えが必要になります。
まず、作業の記録を残してもらってください。何をどう実装したかのメモがあれば、その人が対応できなくなっても引き継げます。逆に、記録がないまま作業が進むと、実質的にその人しか触れないサイトになります。
次に、納品物の範囲を明文化してください。ソースコード、デザインデータ、設定情報、管理画面のアカウント。個人との契約では、こうした引き渡しが曖昧なまま終わることがあります。契約書に一覧を添付するのが確実です。
最後に、連絡が取れなくなった場合の対応を想定しておいてください。サーバーやドメインの管理を任せきりにすると、連絡が途絶えた時点でサイトを維持できなくなります。契約や権限は必ず自社名義で保持し、作業のためのアクセス権だけを付与する形にしてください。
分業する場合は、契約前に(1) 全体設計に責任を持つのはどちらか (2) 月次打ち合わせに両社が同席するか (3) 技術的な判断を誰が下すかの3点を決めてください。これが決まっていない分業は高い確率で機能しません。
複数社に分けて発注する場合の落とし穴
「制作は制作会社、AI検索対策はSEO会社」という分業は、一見合理的に見えます。しかし実務では次の問題が起きます。
落とし穴1:責任の所在が曖昧になる
最大の問題です。効果が出なかったとき、構造の問題なのかコンテンツの問題なのかを、どちらの会社も自社の責任とは認めにくくなります。結果として、発注側が判断を迫られますが、専門知識がないと判定できません。
落とし穴2:手戻りが発生する
制作会社が組んだ構造を、後からSEO会社が組み替える。この作業は、最初から設計に入っていれば不要だった工数です。目安として、分業した場合の総コストは一社に集約した場合の1.2〜1.5倍になります。
落とし穴3:発注側の管理工数が増える
2社の間に立って情報を仲介する役割が発生します。週次の打ち合わせが2本になり、認識のずれを調整する時間も必要です。社内にWeb担当者がいない企業では、この負担が現実的な障害になります。
落とし穴4:技術的な判断が止まる
「構造化データを実装したいが、テンプレートの改修が必要」という場面で、SEO会社は判断できず、制作会社は依頼がないと動かない。誰も決められない状態が生まれます。
分業するなら
次の3点を契約前に決めてください。(1) 全体設計に責任を持つのはどちらか (2) 月次の打ち合わせに両社が同席するか (3) 技術的な判断を最終的に誰が下すか。これが決まっていない分業は、高い確率で機能しません。
落とし穴5:更新のたびに、どちらに連絡すべきか分からなくなる
公開後の運用フェーズで顕在化する問題です。記事を追加したい、フォームの項目を変えたい、構造化データを更新したい。それぞれ担当が違うため、依頼のたびに窓口を判断する必要が生じます。
判断を誤ると、依頼が一往復無駄になります。月に数回のことでも、積み重なると担当者の負担は小さくありません。分業する場合は、「まずこちらに連絡すれば、社内で振り分ける」という一次窓口を決めておいてください。
判断がつかない場合は、まず現状診断だけを受けて構造上の問題を洗い出すところから始めてください。構造に問題がなければ制作は不要ですし、問題があるなら制作会社の領域です。
この図のどこに自社が当てはまるか判断がつかない場合は、無料のAI検索診断で現状をお調べします。
無料でAI検索診断を依頼する →状況別・最適な依頼先の早見表
| 状況 | 第一候補 | 第二候補 | 避けたい選択 |
|---|---|---|---|
| 3年以上更新していないサイト | 制作会社 | 代理店 | SEO会社単独(実装できない) |
| 1年以内に制作、構造は良好 | 専業/SEO会社 | 制作会社 | 全面リニューアル(不要な支出) |
| ブランド刷新も同時に行う | 制作会社 | 代理店 | 専業単独(デザイン非対応) |
| 広告・SNSも統合したい | 代理店 | 制作会社+専業 | フリーランス単独 |
| 予算50万円以下 | 専業/フリーランス | 小規模制作会社 | 代理店(予算が合わない) |
| 社内にWeb担当者がいる | 専業+内製 | 制作会社 | 丸投げ(社内の強みを活かせない) |
| 社内に担当者がいない | 制作会社(運用込み) | 代理店 | 分業(管理できない) |
| 記事を継続的に出したい | SEO会社/制作会社 | 専業 | フリーランス単独(継続性) |
社内でどこまで担うかについては、内製と外注の境界線もあわせてご覧ください。内製できる範囲を把握しておくと、依頼する範囲を正確に切り出せます。
見積を横並びで比較する手順
タイプの異なる会社から見積を取ると、書式も粒度もばらばらで比較できません。次の手順で整理してください。
手順1:5工程のマトリクスに並べ替える
横軸に会社名、縦軸に診断・情報構造設計・技術実装・コンテンツ制作・計測改善の5工程を置いた表を作ります。各社の見積項目を、この5工程のどれかに割り当てていきます。
この作業をすると、見積書の見た目とは違う姿が見えてきます。項目数が多く丁寧に見えた見積が、実は技術実装に偏っていた。シンプルな見積のほうが、実は5工程を網羅していた。こうした発見は珍しくありません。
手順2:空欄を埋めるコストを足す
マトリクスに空欄がある場合、その工程は実施されません。自社で行うのか、別会社に頼むのか、実施しないのかを決め、実施する場合のコストを見積額に加算します。
たとえば、A社の見積が80万円でコンテンツ制作が空欄、B社が130万円で記事5本込みだとします。記事5本を別途外注すると1本5万円で25万円。A社の実質は105万円となり、差は25万円まで縮まります。この状態で初めて、正しい比較ができます。
手順2-1:金額に含まれる「回数」と「本数」を揃える
工程を揃えても、その中身の量が違えば比較になりません。記事制作なら本数と取材の有無、デザインなら提案案数と修正回数、計測ならプロンプト件数と対象AIの数。数量の条件を揃えてから金額を並べてください。
各社の見積で条件が違う場合は、単価に割り戻すと比較しやすくなります。記事5本で50万円のA社と、記事3本で36万円のB社なら、1本あたり10万円と12万円。総額ではA社が高く見えますが、単価ではA社のほうが安いことが分かります。
手順3:管理工数を加味する
複数社に分けて発注する場合、社内の管理工数が発生します。週1時間の打ち合わせが1本増えるだけでも、3か月で12時間。時給換算すれば数万円分のコストです。金額には表れないが、確実に発生する負担として認識してください。
手順4:継続コストを3年分で見る
初期費用だけでなく、運用費を3年分足して比較します。月額15万円の運用は、3年で540万円。初期費用の差より大きくなることもあります。運用に何が含まれるかも、同じマトリクスで整理してください。
この作業にかかる時間
3社分でおよそ2時間です。数百万円の判断に対して2時間は妥当な投資と言えます。この整理をしないまま総額だけで選ぶと、契約後に「それは範囲外です」という会話が繰り返されます。
既存の取引先に依頼できるか見極める
新しい会社を探す前に、いま付き合いのある制作会社やSEO会社に対応できるかを確認するのが自然な順序です。関係性があるぶん、進行はスムーズになります。
見極めのための3つの質問
- 「AI検索対策として、具体的にどんな作業を提供できますか」
5工程のうち、どこまで対応できるかを確認します。「検討中です」という回答も誠実ではありますが、その場合は着手時期を確認してください。 - 「御社の他のクライアントで、AI検索対策の実績はありますか」
守秘義務で社名が出せなくても、業種と施策内容、結果の傾向は話せるはずです。まったく出てこない場合は、経験がない可能性があります。 - 「対応できない部分がある場合、どこと連携しますか」
すべてを自社で抱えようとせず、連携先を明示できる会社のほうが実務的には信頼できます。
既存の取引先に頼むメリット
- サイトの構造とこれまでの経緯を理解している
- 過去の資料やデータが手元にある
- コミュニケーションのコストが低い
- 小さな依頼から段階的に始めやすい
それでも切り替えを検討すべき場合
関係性を優先しすぎると、成果を逃すこともあります。「勉強しながらやります」という姿勢は誠実ですが、その学習コストを負担するのは発注側です。急ぎの案件では、経験のある会社に依頼するほうが合理的な場合もあります。
取引先に「勉強してもらう」判断はありか
長年の付き合いがある制作会社に、AI検索対策を一緒に学びながら進めてもらう。この選択は、条件次第では成立します。
成立する条件は3つです。(1) その会社に技術的な基礎があること。構造化データやCore Web Vitalsを扱った経験があれば、AI検索対策の実装部分はすぐに習得できます。(2) 学習期間の費用負担を明確にすること。調査や試行錯誤の時間を誰が負担するかを、契約前に合意します。(3) 急ぎの案件でないこと。競合が先行している状況では、学習期間を待つ余裕がない場合があります。
この3条件が揃わない場合は、経験のある会社に依頼するか、専業を部分的に併用するほうが確実です。関係性を優先した結果、機会を逃すことは実際に起きます。付き合いの長さと、案件の緊急度は切り分けて判断してください。
切り替えを検討すべきタイミング
現在の依頼先を継続するか変更するかは、次の観点で判断してください。
| 状況 | 判断 |
|---|---|
| 提案がテンプレートで、自社への言及がない | 切り替えを検討 |
| レポートが数値の羅列で、改善提案がない | まず改善を要求。変化がなければ検討 |
| 技術的な質問への回答が曖昧 | 切り替えを検討 |
| 6か月以上、施策に変化がない | 切り替えを検討 |
| 担当者が頻繁に交代する | 体制の説明を求める |
| 成果は出ていないが、施策は継続的に打っている | 継続。AI検索は時間がかかる |
| できないことを正直に言い、代替案を出す | 継続を推奨 |
判断を急がないほうがよいケース
成果が出ないからといって、すぐに切り替えるのが正解とは限りません。AI検索での露出は1〜3か月かけて現れ、その後も競合の動きによって変動します。3か月で判断すると、効き始める直前で手を離すことになりかねません。
見るべきは結果そのものより、施策が継続的に打たれているか、その根拠が説明されているかです。毎月同じ作業を繰り返しているだけなら問題ですが、前月の結果を踏まえて次の施策を変えているなら、もう少し待つ価値があります。
切り替えの前に確保すべきもの
依頼先を変更する場合、次の資産を手元に確保してください。これがないと、次の会社は一から作り直すことになります。
- サイトマップと情報構造の設計書:なぜその構成になっているかの根拠
- リダイレクト表:過去のURL変更の履歴
- ソースコードと制作データ:デザインデータを含む
- CMSとサーバーの管理権限:これがないと何もできません
- GA4・Search Consoleの管理権限:過去データとの比較に必要
- 計測に使っているプロンプトのリストと記録:施策の連続性を保つため
最も注意すべき点
制作会社の独自CMSやシステムに依存している場合、他社への移管ができません。この状態になると、サービスに不満があっても乗り換えられず、作り直すしかなくなります。新規契約の際は、必ずソースコードの権利帰属と引き渡しの可否を確認してください。
依頼先が決まったあとの進め方
契約して終わりではなく、最初の1か月の進め方で、その後の成果が大きく変わります。発注側が押さえておくべき点を整理します。
キックオフで決めておく5項目
- 成果の定義と、判定する時期:何をもって成功とするか。3か月後か6か月後か
- 報告の頻度と形式:月次か隔週か。レポートに改善提案が含まれるか
- 社内側の窓口と決裁者:誰が確認し、誰が最終判断するか
- 一次情報の提供方法:取材の日程、資料の提供範囲
- 緊急時の連絡経路:サイトに問題が起きたときの連絡先と対応時間
この5項目を1枚にまとめて双方で共有しておくと、進行中の齟齬がほぼなくなります。特に1番の「成果の定義」は、後の評価で必ず論点になるので、書面に残してください。
最初の1か月でやること
制作会社側は診断と設計を進めますが、発注側にもやるべきことがあります。営業現場からのヒアリング、社内にある数字の棚卸し、掲載可能な実績の整理。この3つを並行して進めておくと、コンテンツ制作の工程で待ちが発生しません。
逆に、この準備を後回しにすると、設計とデザインが終わったあとに「原稿がない」という状態になり、公開が数か月遅れます。実際、進行が遅れる案件のほとんどはこのパターンです。
途中で方針を変えたくなったら
進行中に「やはり別の方向がいい」と感じることはあります。その場合、変更が構造に及ぶのか、表現にとどまるのかを切り分けてください。表現の変更なら影響は限定的ですが、構造の変更はスケジュールと費用に直結します。
制作会社に「この変更は、構造に影響しますか」と聞けば、判断材料が得られます。影響が大きい場合は、第2弾での対応を検討するほうが合理的なこともあります。
まとめ:一社に集約するか、責任者を明確にするか
依頼先の選択で失敗する最大の原因は、誰が全体の成果に責任を持つのかが曖昧なことです。制作会社、SEO会社、代理店、専業。どれを選んでも、その1社が全体設計に責任を持つ体制であれば機能します。
逆に、複数社が部分的に関わり、全体を見る人がいない状態では、どれだけ優秀な会社を集めても成果は出ません。分業する場合は、社内に全体を見る担当者を置くか、いずれかの会社に統括を明示的に委ねてください。
要件を整理して各社に同じ条件で提案を求めたい場合は、RFP(提案依頼書)の書き方にテンプレートを掲載しています。比較の精度が大きく上がります。
よくある質問
Q.いま契約しているSEO会社に、AI検索対策も依頼できますか?
A.依頼できるかどうかは、その会社が実装まで関与できるかで決まります。キーワード設計と記事制作が中心のSEO会社の場合、構造化データの実装や情報構造の再設計は制作会社側の作業になるため、実質的に連携が必要です。まず「構造化データはどのスキーマを実装しますか」「AI言及はどう計測しますか」の2問を投げてみてください。具体的な回答が返ってくれば任せられますし、順位の話しか出てこなければ、別の依頼先を検討する材料になります。
Q.制作会社とSEO会社の両方に発注するのは非効率ですか?
A.役割分担が明確なら機能しますが、責任の所在が曖昧になりやすい点に注意が必要です。効果が出なかったときに「構造の問題」なのか「コンテンツの問題」なのかを、どちらの会社も自社の責任と認めにくくなります。分けて発注する場合は、契約前にどちらが全体設計に責任を持つかを決め、月次の打ち合わせに両社が同席する体制を作ってください。それが難しい場合は、一社に集約したほうが結果的に安く済みます。
Q.広告代理店に頼むと高くなりますか?
A.同じ成果物であれば、制作会社に直接依頼するより2〜3割高くなるのが一般的です。実作業を制作会社に再委託するため、その分の管理費が乗るためです。ただし、広告・SNS・Webを横断して設計したい場合や、社内に管理できる人員がいない場合は、その費用に見合う価値があります。判断軸は金額ではなく、社内の管理工数をどこまで外部に預けたいかです。
Q.AI検索対策の専業会社は実績が浅くて不安です。どう判断すべきですか?
A.会社の設立年ではなく、担当者個人の経歴と、その会社自身のサイトの実装状況で判断してください。AI検索対策という領域自体が新しいため、どの会社も長い実績は持ち得ません。確認すべきは、自社サイトに構造化データが実装されているか、robots.txtとllms.txtが整備されているか、技術情報を継続的に発信しているか、そしてAIに聞いたときにその会社が引用されるか。この4点で、実務の蓄積はある程度判別できます。
Q.依頼先を途中で変更することはできますか?
A.可能ですが、事前の準備が必要です。設計書、サイトマップ、リダイレクト表、ソースコード、CMSの管理権限が手元にあれば、他社への引き継ぎはスムーズです。逆に、制作会社の独自システムに依存している場合や、成果物のデータを受け取っていない場合は、実質的に作り直しになります。契約時に納品物リストとソースコードの権利帰属を確認しておくことが、乗り換えの自由を確保する唯一の方法です。
