この記事の要点
- AI検索の露出は順位ツールでは測れません。プロンプトを固定して定期的に投げ、言及の有無を記録する方法が基本です。
- 追うべき指標は7つ。中核は言及率・引用ページ・AI経由セッション・AI経由CV・指名検索数の5つです。
- GA4ではchatgpt.com / perplexity.ai / gemini.google.com などをリファラーで分離して見ます。標準レポートのままでは埋もれます。
- 生成AIの回答は同じ質問でも変動するため、1回の結果で判断せず、複数回の平均と数か月の推移で見てください。
- 最初は20〜30プロンプト×3AI×月1回から。続けられる量で始めるほうが、大規模に始めて挫折するより成果が出ます。
結論:AI検索の効果測定は3層で行う
AI検索対策の効果は、ひとつの数字では表せません。露出・流入・成果の3層に分けて測るのが実務的なアプローチです。
| 層 | 測るもの | 使うツール | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 第1層:露出 | AIの回答に自社が含まれるか、どのページが引用されるか | 各AI+スプレッドシート | 月1回 |
| 第2層:流入 | AI検索経由で何人が訪問したか、どのページに着地したか | GA4 | 月1回 |
| 第3層:成果 | 問い合わせ、資料請求、指名検索の増加 | GA4、Search Console | 月1回 |
3層に分ける理由
第1層だけを見ていると、「AIには出ているのに問い合わせが増えない」という状況の原因が分かりません。逆に第3層だけを見ていると、成果が出ていない理由が露出の問題なのか導線の問題なのか判定できません。3層をつなげて見ることで、どこがボトルネックかが特定できます。
第1層だけを見ていると「AIには出ているのに問い合わせが増えない」原因が分かりません。3層をつなげて見ることで、どこがボトルネックかが特定できます。
なぜ順位ツールでは測れないのか
SEOでは、指定したキーワードでの検索順位を自動で追うツールが確立しています。AI検索でこの方法が使えない理由は3つあります。
理由1:順位という概念が存在しない
AIは検索結果の一覧を返しません。回答文を生成し、その根拠として数件のURLを提示します。「1位」「2位」という位置がそもそもないため、順位という指標が成立しません。
代わりに使えるのは、回答文の中で何番目に社名が出たか(言及順)です。ただしこれも後述のとおり、1回の結果には意味がありません。
理由2:同じ質問でも回答が変わる
生成AIは確率的に文章を生成するため、同じ質問を続けて投げても、回答内容や挙げられる企業が変わることがあります。1回測って「出た」「出なかった」を記録しても、それは偶然の結果かもしれません。
このため、実務では同じプロンプトを3〜5回実行し、言及された割合を「言及率」として記録します。5回中3回出れば60%、といった形です。
理由3:質問文の自由度が高すぎる
検索キーワードは「地域名 業種」のように定型化しやすいのに対し、AIへの質問は文章です。同じ意図でも、言い回しによって回答が変わります。
・東京でホームページ制作会社を探しています
・製造業のサイトに強い制作会社を教えて
・AI検索に対応できるWeb制作会社はどこ?
この3つは意図が近いものの、返ってくる企業は一致しません。複数のパターンを設計して測る必要があるのは、このためです。
追うべき7つの指標
| # | 指標 | 定義 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 言及率 | 設定したプロンプトのうち、自社名が挙がった割合 | 最重要 |
| 2 | 引用ページ | 回答の根拠として提示された自社URLの種類と件数 | 最重要 |
| 3 | AI経由セッション | GA4で計測したAIサービスからの訪問数 | 重要 |
| 4 | AI経由コンバージョン | AI経由の訪問から発生した問い合わせ・資料請求 | 重要 |
| 5 | 指名検索数 | Search Consoleでの社名・ブランド名クエリの表示回数 | 重要 |
| 6 | 競合の言及状況 | 同じプロンプトで挙がる競合企業とその頻度 | 参考 |
| 7 | 言及の質 | どんな文脈で紹介されているか(肯定的か、機能の説明か) | 参考 |
指標1:言及率の測り方
最も基本的な指標です。20プロンプトを3AIに投げ、自社名が挙がった回数を分母で割ります。20プロンプト×3AI=60回のうち12回で挙がれば、言及率20%です。
目安として、対策前は0〜5%、6か月後に20〜40%を目指すのが現実的な水準です。ただし業界の競合数やキーワードの競争度によって大きく変わるため、他社と比較するより自社の推移を追ってください。
指標2:引用ページの見方
言及されたときに、どのURLが根拠として提示されたかを記録します。トップページばかりが引用されている場合、個別ページの情報が薄い可能性があります。
理想は、質問の内容に応じて適切な下層ページが引用される状態です。料金の質問には料金ページ、事例の質問には実績ページ。これが実現できていれば、情報構造が正しく機能している証拠です。
指標5:指名検索数がなぜ重要か
AIの回答で社名を知った人は、その後に社名で検索して詳しく調べます。この動きはAI経由の流入としては計上されませんが、指名検索数の増加として現れます。
Search Consoleで社名を含むクエリの表示回数を月次で追ってください。AI検索対策の効果が、遅れて現れる指標として機能します。
重要なのは自社名を含まない質問を8割にすることです。社名で聞けば当然自社の情報が出ますが、実際の見込み客は社名を知らない状態で質問します。一度決めたプロンプトは、推移を追うため変えずに固定してください。
プロンプト設計の方法
測定の質は、プロンプト設計でほぼ決まります。次の5カテゴリから、それぞれ4〜6件ずつ作ると偏りが出ません。
| カテゴリ | 例 | 意図 | 件数の目安 |
|---|---|---|---|
| 業種+地域 | 東京で〇〇に強い会社を教えて | 最も基本的な指名獲得の入口 | 5〜6件 |
| 課題ベース | △△の課題を解決する方法は? | 顕在化していない層への露出 | 5〜6件 |
| 比較・選び方 | 〇〇の会社を選ぶポイントは? | 比較検討中の層 | 4〜5件 |
| 価格 | 〇〇の相場はいくら? | AIが最も問われる情報のひとつ | 3〜4件 |
| 自社名 | (自社名)はどんな会社? | 誤情報の有無を確認 | 2〜3件 |
設計の原則
- 自社名を含まない質問を8割にする:実際の見込み客は社名を知りません
- 実際の顧客の言葉を使う:業界の専門用語ではなく、顧客が使う表現で
- 一度決めたら変えない:推移を追うため、プロンプトは固定します
- 営業担当に監修してもらう:商談で実際に聞かれる質問が最良の素材です
よくある失敗
自社に有利なプロンプトばかりを設計してしまうケースです。「AI検索対策に強い銀座のホームページ制作会社」のように条件を絞り込めば当然出やすくなりますが、そんな質問を投げる見込み客はほとんどいません。実際に投げられる粒度の質問で測ってください。
言及調査の実施手順
準備:記録シートを作る
スプレッドシートに次の列を用意します。1行1プロンプトです。
- No. / プロンプト / カテゴリ
- ChatGPT:言及有無(○×)/言及順/引用URL
- Gemini:同上
- Perplexity:同上
- 挙がった競合(上位3社)
- メモ(言及の文脈、気づいたこと)
実施:同じ条件で投げる
- ログアウト状態またはシークレットウィンドウで実行:過去の会話履歴の影響を避けるため
- 1プロンプトにつき3回実行:変動を平準化する
- 回答をそのままコピーして保存:後から文脈を確認できるようにする
- 引用元URLを記録:どのページが使われたかが改善のヒントになる
- 競合名も記録:誰と比較されているかを把握する
所要時間
20プロンプト×3AI×3回=180回。1回あたり20〜30秒として、およそ1.5〜2時間です。月1回であれば、担当者1名で無理なく回せる分量です。
効率化のコツ
3回実行のうち、変動が少ないことが分かったプロンプトは翌月から1回に減らして構いません。逆に、毎回結果が変わるプロンプトは5回に増やします。すべてを均一に測る必要はなく、変動の大きさに応じて回数を調整してください。
AI別に見た測定の勘所
4つの主要な生成AIは、それぞれ情報の参照方法が異なります。同じ施策でも反応の出方が変わるため、特性を理解しておくと結果の解釈がしやすくなります。
ChatGPT
検索機能を使う場合と使わない場合で、挙動が大きく変わります。検索が発動すると、その時点のWeb情報を参照して回答が作られます。発動しない場合は、学習データにもとづく回答になります。
測定の際は、検索が発動したかどうかを回答の表示で確認してください。引用元のリンクが表示されていれば検索が使われています。表示されていない回答で自社が挙がらないのは、Web上の対策とは別の要因である可能性があります。対策の効果を見たいなら、検索が発動した回答を対象にするのが妥当です。
Google AI Overviews / Gemini
Google検索のインデックスを土台にしているため、SEOの評価が比較的そのまま反映されます。検索順位が上位のページは、AI Overviewsでも引用されやすい傾向があります。
逆に言えば、検索でまったく評価されていないサイトが、AI Overviewsだけで急に引用されることは考えにくくなります。ここで露出がない場合は、まず基本的なSEOの状態を確認してください。インデックスされているか、主要キーワードで何位にいるか。土台の問題であることが多くあります。
Perplexity
回答と同時に必ず引用元を提示する設計のため、どのページが評価されているかが最も分かりやすいのが特徴です。測定の初期段階では、Perplexityの結果を重点的に見ると改善の手がかりが得られやすくなります。
また、比較的新しい情報を拾いやすい傾向があるため、記事を追加したあとの反応が早く出ることがあります。施策の効果を早めに確認したい場合の観測点として使えます。
Microsoft Copilot
Bingのインデックスを参照します。日本国内ではGoogleに比べて利用者は少ないものの、法人環境でMicrosoft製品と統合されている場合、業務中の検索で使われることがあります。BtoB企業の場合は測定対象に含める価値があります。
Bing Webmaster Toolsにサイトを登録しておくと、インデックス状況を確認できます。Googleにしか登録していない企業は多いので、登録するだけで差がつくこともあります。
4つを同じ重みで見なくてよい
自社の顧客がどのAIを使っているかは業種によって偏ります。まず3つで測り、結果の出方を見てから重点を置くAIを決めるのが効率的です。すべてを均等に追う必要はありません。
GA4でAI経由の流入を分離する
対象とするリファラー
| サービス | リファラーのドメイン例 |
|---|---|
| ChatGPT | chatgpt.com / chat.openai.com |
| Perplexity | perplexity.ai |
| Gemini | gemini.google.com |
| Microsoft Copilot | copilot.microsoft.com |
| Claude | claude.ai |
設定手順(探索レポート)
- GA4の「探索」から新しい空白のレポートを作成
- ディメンションに「セッションの参照元」「ランディングページ」を追加
- 指標に「セッション数」「エンゲージのあったセッション数」「コンバージョン」を追加
- フィルタで、参照元に上記ドメインのいずれかを含む条件を設定
- レポートを保存し、毎月同じ条件で確認する
数字の解釈で注意すること
GA4に表示されるAI経由の数字は、実際の影響より小さく出ます。理由は3つあります。
- アプリ経由の流入はリファラーが付かないことがある:スマホアプリからのアクセス
- AIの回答を読んで、後から社名で検索する動きは計上されない:この経路が実は多い
- 回答だけ読んでサイトに来ないケースがある:それでも認知には効いている
このため、GA4の数字だけで判断せず、言及率と指名検索数をあわせて見る必要があります。
着地ページの分析も忘れずに
AI経由のセッションを抽出したら、あわせてどのページに着地しているかも確認してください。AIが引用したURLがそのまま着地ページになるため、言及調査の記録と突き合わせると精度が上がります。
着地ページが分かれば、そのページの直帰率やコンバージョン率も見られます。引用はされているが、そのページから問い合わせにつながっていないという状態が見つかれば、改善すべきは露出ではなく導線だと判断できます。
AI Overviewsは手動確認が必要
Google AI Overviews(検索結果最上部のAI回答)に引用されたかどうかは、GA4では判別できません。想定される検索キーワードを20〜30件用意し、シークレットウィンドウで検索して確認する手動の作業が必要です。確認手順と記録方法はAI Overviews対策にまとめています。
Search Consoleで見るべき指標
指名検索数の追い方
検索パフォーマンスのレポートで、クエリに社名やブランド名を含む条件でフィルタし、表示回数とクリック数の推移を追います。AI経由で認知した層が、後から社名で検索する動きを捉えられます。
インデックス状況の確認
ページのインデックス登録レポートで、登録されているページ数と、除外されたページとその理由を確認します。AIが参照するにはインデックスされていることが前提になるため、意図せず除外されているページがないかを月次で確認してください。
リッチリザルトの表示状況
構造化データが正しく認識されていれば、Search Consoleの「拡張」セクションにFAQやパンくずリストの項目が表示されます。実装したのに項目が現れない場合は、認識されていない可能性があります。実装内容の確認は構造化データ実装ガイドを参照してください。
Bing Webmaster Toolsも登録しておく
Microsoft CopilotはBingのインデックスを参照するため、Bing側でのインデックス状況を確認できると測定の精度が上がります。Bing Webmaster Toolsは無料で、Search Consoleからサイト情報をインポートする機能もあるため、登録は10分程度で完了します。
日本ではGoogleに比べて利用者が少ないこともあり、登録していない企業が多数です。登録していないと、そもそもインデックスされているかどうかも分かりません。BtoB企業や、法人利用の多い業種では確認しておく価値があります。
言及率100%を目標に置かないでください。AIは質問ごとに数社を挙げるため、すべての質問で自社が挙がることは現実的ではありません。業界に競合が10社いれば、3〜5割の言及率でも十分に上位です。
自社が今どの段階にいるか、無料診断で確認できます。プロンプト単位の実測レポートをお渡しします。
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数値目標がないと、成果の判定が主観的になります。次の考え方で設定してください。
| 時期 | 言及率の目安 | 見るべきこと |
|---|---|---|
| 着手前 | 実測して記録 | 基準点の確定。この数字がないと評価できない |
| 1か月後 | 変化なしでも正常 | 技術的な問題がないか。404、インデックス数 |
| 3か月後 | 基準の1.5〜2倍 | 初期の反応。引用ページの種類が増えているか |
| 6か月後 | 20〜40% | 本格的な評価。CVへの寄与も見る |
| 12か月後 | 30〜50% | 安定期。競合の動きに応じた維持・改善 |
目標設定のときの注意
言及率100%を目標に置かないでください。AIは質問ごとに数社を挙げるため、すべての質問で自社が挙がることは現実的ではありません。業界に競合が10社いれば、3〜5割の言及率でも十分に上位です。
あわせて、事業側の目標とも紐づけてください。「言及率を30%にする」だけでは社内で意味を持ちません。「言及率30%を通じて、Web経由の問い合わせを月5件から10件に増やす」という形で結びつけます。
目標が達成できなかったときの見方
6か月後に言及率が10%にとどまった場合、施策が失敗したと結論づける前に、確認すべきことがあります。
まず、競合の動きを見てください。同じ期間に競合が大規模に対策を進めていれば、相対的な位置は変わっていない可能性があります。逆に、自社だけが動いていて数字が伸びないなら、施策そのものに問題があります。
次に、プロンプトの難易度を確認してください。大手企業がすでに強く言及されている領域の質問ばかりを設定していると、数字は伸びにくくなります。ニッチな課題や地域を含む質問では言及されているのに、汎用的な質問で出ていないというケースは多く、これは失敗ではなく段階です。
最後に、指標をひとつに絞りすぎていないかを見てください。言及率が横ばいでも、引用されるページの種類が増えていれば前進しています。問い合わせが増えていれば、なおさらです。
最も重要なのは4ページ目の改善提案です。数値の報告だけでは次の打ち手が決まりません。運用を委託している場合、このページがあるかどうかがレポートの価値を決めます。
月次レポートの構成
社内共有や経営報告に使えるレポートの構成例です。A4で3〜4ページに収まります。
1ページ目:サマリー
- 言及率(前月比・対基準点)
- AI経由セッション数とコンバージョン数
- 指名検索数の推移
- 今月実施した施策の一覧
- 来月の施策予定
2ページ目:言及調査の詳細
- プロンプト別の言及有無(一覧表)
- 引用されたページのランキング
- 言及率が高いカテゴリと低いカテゴリ
- 実際の回答文の抜粋(2〜3例)
3ページ目:競合分析
- 頻繁に挙がる競合企業とその頻度
- 競合が引用されているページの特徴
- 自社との差分(何が書かれていて、自社にないか)
4ページ目:改善提案
- 優先度順の改善項目(3〜5件)
- 各項目の想定工数と期待効果
- 次月に着手するもの
レポートで最も重要なページ
4ページ目の改善提案です。数値の報告だけでは次の打ち手が決まりません。制作会社や運用会社に委託している場合、このページがあるかどうかがレポートの価値を決めます。依頼先を選ぶ際にも、レポートのサンプル提示を求めてください。
測定結果から改善策を導く
数字を見たあと、何をすべきかの判断基準を示します。
| 観測される状況 | 想定される原因 | 打つべき手 |
|---|---|---|
| どのプロンプトでも言及されない | クローラーがブロックされている/インデックスされていない | robots.txt、CDN設定、Search Consoleを確認 |
| 自社名の質問では出るが、業種の質問では出ない | 「何をする会社か」がAIに伝わっていない | 構造化データ、事業内容の具体化 |
| 言及はされるが、常にトップページが引用される | 下層ページの情報が薄い | 個別ページの内容を厚くする |
| 価格の質問で競合だけが出る | 料金情報を公開していない | 価格帯の掲載、Serviceスキーマの実装 |
| 言及はされるが、説明が不正確 | 古い情報が参照されている | 正しい一次情報を構造化して掲載 |
| 言及率は上がったがCVが増えない | 着地ページの導線に問題がある | 引用されているページのCTAを見直す |
| AI経由セッションは少ないが指名検索は増えた | AIで認知され、後から検索されている | 正常な推移。継続する |
優先順位の付け方
複数の課題が見つかった場合は、「影響範囲の広さ×実施の容易さ」で並べてください。robots.txtの修正は全プロンプトに影響し、作業は30分。個別ページの加筆は影響が限定的で、作業は数時間。前者から着手するのが合理的です。
改善に着手する前に、原因を切り分ける
数字が動かないとき、すぐに施策を追加するのは避けてください。まず技術的な問題か、情報の問題か、競争環境の問題かを切り分けます。
技術的な問題なら、robots.txtやインデックス状況にサインが出ます。ここは30分で確認でき、修正の効果も大きい領域です。情報の問題なら、競合の引用ページと自社のページを見比べると差が見えます。料金が書かれているか、具体的な数値があるか、Q&A形式になっているか。競争環境の問題なら、そのプロンプトで挙がる企業が業界の大手ばかり、といった形で現れます。
この切り分けを飛ばして施策を追加すると、効かない打ち手に時間を使うことになります。1時間の分析が、1か月分の作業を節約することは珍しくありません。
測定でやりがちな5つの間違い
間違い1:1回の結果で判断する
生成AIの回答は変動します。1回出なかったからといって施策が失敗したわけではありません。複数回の平均と、数か月の推移で見るのが正しい使い方です。
間違い2:プロンプトを毎月変えてしまう
「もっと良い質問を思いついた」と条件を変えると、前月との比較ができなくなります。新しいプロンプトを追加するのは構いませんが、既存のものは変えずに残してください。
間違い3:ログイン状態で測定する
過去の会話履歴や、カスタム指示の影響を受けます。シークレットウィンドウかログアウト状態で実行してください。
間違い4:自社に有利な質問ばかり設計する
条件を絞り込めば当然出やすくなりますが、実態を反映しません。見込み客が実際に投げる粒度で測ってください。
間違い5:測定はするが、改善につなげない
最も多い失敗です。データを取ることが目的化し、レポートが積み上がるだけになる。測定の最後に必ず「次に何をするか」を1つ以上決めるルールにしてください。
測定を続けるための仕組み化
測定は続けなければ意味がありません。継続のための工夫を挙げます。
1. 定例化する
毎月第1営業日、といった形でカレンダーに登録します。「時間ができたらやる」では続きません。作業時間を2時間、業務として確保してください。
1-1. 測定日を月初に固定する理由
測定日は月初がおすすめです。月末に設定すると、繁忙期や決算期と重なって後回しになりやすいためです。月初の第1〜3営業日のどこかに固定しておくと、抜けにくくなります。
また、施策を実施したタイミングとの関係も整理しやすくなります。「4月に記事を3本追加した結果が、5月・6月の数字にどう出たか」という形で、月単位の因果を追えるようになります。
2. テンプレートを用意する
記録シートとレポートのフォーマットを固定しておけば、毎回の判断が減ります。担当者が交代しても、同じ形式で継続できます。
2-1. 判断の基準もテンプレートに書いておく
記録シートには、判断に迷う場面が出てきます。「社名は出たが、説明が1行だけの場合は言及ありとするか」「競合の説明の中で比較対象として挙がった場合はどうするか」。こうした基準を決めずに測ると、担当者や月によって記録がぶれます。
最初の測定時に判断基準を書き出し、シートの先頭に記載しておいてください。基準が揃っていないデータは、推移として比較できません。細かく見えますが、1年続けたときの価値が変わります。
3. 属人化を避ける
プロンプトのリスト、測定手順、記録シートを共有ドライブに置きます。1人しか手順を知らない状態は、その人の異動で測定が止まります。
4. 最初は小さく始める
20プロンプト×3AI×月1回。これで十分に傾向は追えます。大規模に始めて3か月で挫折するより、小さく始めて1年続けるほうが得られる情報は多くなります。
5. 共有する相手を決める
レポートを作っても誰も見なければ、作業のモチベーションが続きません。月次で誰に報告するかを決めておくことで、継続の理由が生まれます。営業部門と共有すると、プロンプトの改善案も集まりやすくなります。
測定の副次的な効果
言及調査を続けると、見込み客がどんな言葉で自社の業界を語るかが見えてきます。社内で使う専門用語と、顧客が使う言葉のずれに気づくことも多く、それ自体がサイトの原稿を書き直す材料になります。測定は評価のためだけの作業ではありません。
有料ツールを検討するタイミング
AI検索の言及を自動計測する有料ツールが登場しています。導入を検討すべきタイミングを整理します。
手動で十分なケース
- プロンプト数が30件以下
- 対象AIが3つ以下
- 測定頻度が月1回
- 単一の事業・サービスを扱っている
この範囲なら、月2時間程度の作業で回せます。ツールの費用を払うより、その時間を改善作業に充てるほうが効果的です。
ツールを検討すべきケース
- プロンプト数が100件を超える
- 複数の事業部・ブランドを別々に追う必要がある
- 週次など高頻度で測定したい
- 複数の担当者が同じ形式で記録する必要がある
- クライアントワークとして、複数社分を管理している
ツール選定時の確認点
導入を検討する場合、次を確認してください。対応しているAIの種類、測定の頻度と実行回数(1回だけの実行では変動を捉えられません)、引用元URLまで記録されるか、データのエクスポートが可能か。特に最後の項目は、ツールを乗り換える際に過去データを失わないために重要です。
なお、ツールを入れても回答文を読んで文脈を把握する作業は自分で行う必要があります。数値の集計は自動化できても、「どういう文脈で紹介されているか」の解釈は人が行う領域です。
経営層への説明の仕方
測定結果を社内で共有する際、Webに詳しくない相手にどう伝えるかは実務上の課題です。
数値より、実際の画面を見せる
「言及率が20%に上がりました」と説明するより、AIに質問した実際の回答画面を見せるほうが伝わります。「業種で聞いたとき、以前は競合3社だけでしたが、いまは当社が最初に挙がっています」という説明は、専門知識がなくても理解できます。
対策前のスクリーンショットを残しておけば、ビフォーアフターとして並べられます。この比較資料は、追加投資の稟議でも効果を発揮します。
事業の数字と結びつける
言及率という指標は、それ単体では経営判断の材料になりません。次のように接続してください。
言及率が20%に上昇
→ AI経由セッションが月40件増加
→ そのうち問い合わせが月2件発生
→ 成約率20%で月0.4件の受注
→ 平均受注単価150万円で、月60万円の売上寄与
推計であることを明示したうえで、この形で示すと投資判断の会話ができます。Web指標のままでは、経営層にとって判断材料になりません。
期間の見通しを最初に共有する
AI検索の効果は1〜3か月かけて現れます。この前提を最初に共有していないと、1か月目の報告で「効果がない」と判断されて打ち切られることがあります。
着手時に「1か月目は技術的な確認、3か月目に初期評価、6か月目に本評価」というスケジュールを提示しておいてください。評価のタイミングを合意しておくことが、施策を継続するための前提条件になります。
まとめ:測定は施策の前から始める
最後に、最も重要な点を繰り返します。測定は、施策に着手する前から始めてください。
対策後のデータだけでは、変化があったのかどうか判定できません。リニューアルや改修の前に、最低1回は言及調査を実施し、結果を保存してください。この基準点があることで、その後の評価が客観的になり、社内への説明も容易になります。
着手前の測定は無料で、所要時間は2時間です。まだ実施していない場合は、施策の検討と並行して、今週中に一度測ってみてください。手順は内製と外注の境界線にも実践形式で掲載しています。
よくある質問
Q.AI検索での順位は測定できますか?
A.AI検索に「順位」という概念はありません。検索結果の一覧ではなく、回答文の中に含まれるかどうかで評価されるためです。代替として、回答文の中で何番目に言及されたか(言及順)を記録する方法があります。ただし生成AIの回答は同じ質問でも実行するたびに変わるため、1回の順番に意味はありません。同じプロンプトを3〜5回実行し、言及された割合を「言及率」として記録するほうが実務的です。
Q.AI検索経由の流入はGA4で見られますか?
A.見られますが、標準のレポートでは埋もれています。GA4の探索レポートでリファラー(参照元)を条件に、chatgpt.com、perplexity.ai、gemini.google.com、copilot.microsoft.com といったドメインを含むセッションを抽出してください。なおChatGPTアプリからの流入や、AIの回答を読んだあとに社名で検索し直した流入は、リファラーとして計上されません。GA4の数字は実際のAI経由の影響より少なく出ると考えてください。
Q.効果測定にはどんなツールが必要ですか?
A.無料のツールだけで始められます。プロンプト単位の言及調査はスプレッドシートと各AIのWeb版、流入分析はGA4、検索の状況はSearch Console、構造化データの検証はリッチリザルトテストとSchema Markup Validator。有料の専用ツールも登場していますが、月20〜30プロンプト程度の規模なら手動でも十分に運用できます。まず手動で始め、規模が大きくなってからツールを検討するのが現実的です。
Q.測定は月に何回行うべきですか?
A.月1回で十分です。AI検索での露出は週単位で大きく変わるものではなく、頻度を上げても作業量が増えるだけで得られる情報は増えません。重要なのは頻度より継続性で、毎月同じ日に同じプロンプトで測ることです。条件を揃えないと推移が比較できなくなります。カレンダーに定例として登録し、担当者を決めておくことをおすすめします。
Q.測定を始めるタイミングはいつが良いですか?
A.施策に着手する前です。対策後のデータだけでは、変化があったのかどうか判定できません。リニューアルや改修を始める前に、最低1回は言及調査を実施し、その結果を保存しておいてください。この基準点があることで、公開後の評価が客観的になり、社内への報告もしやすくなります。
